HG SHINSHO / PUBLIC PREVIEW / 2040

HG新書『近現代史』 【2040年度版】近日発売

かつての高度同期社会では、時刻、認証、物流、決済、その全ての「同期」が前提だった。
しかし『皐月事変』以後、その前提は変わった。
通信は残り、だが一致は失われた。
GOT(地上・軌道混成到達性網)は、遅延、不整合、局所差異を許容したまま、
接続維持を優先する思想として成立する。
本書は、「同期社会崩壊期」における移行過程を概説したものである。

2040年度版より抜粋 同期社会崩壊期

はじめに

本書は、2020年代後半から2040年にかけて発生した「同期社会崩壊期」を扱う。

従来の近現代史は、国家、戦争、経済、思想を中心として整理されてきた。しかし2027年の『皐月事変』以後、人類社会は大きく変化した。
通信、物流、電力、認証、監査。
これらは単なる社会基盤ではなく、社会維持そのものへ直結する要素となった。

その結果、人類は「完全同期社会」から、「接続維持社会」へ移行した。
本書では、その過程を概説する。

通信は存在した。
しかし、「一致」が失われた。
社会は停止しなかった。停止できなかったのである。

序章 高度同期社会とは何だったか

■0-1 二一世紀前半の世界

二一世紀前半、人類社会は高度な常時接続社会を形成した。
スマートフォン、低軌道衛星通信、クラウド認証、人工知能、即時決済、動画配信。
世界各地は、ほぼ同時に接続されることを前提として運用されていた。

当時の人々にとって、「即座に届く」ことは当然だった。
しかし、その社会は極めて脆弱な前提の上に成立していた。それが「同期」である。

物流
認証
決済
通信
位置情報
世界時刻同期

これらが同時に一致し続けることで、社会は維持されていた。

■0-2 同期社会の特徴

高度同期社会には、常時接続、即時決済、在庫圧縮、中央認証、AI最適化、広域物流などの特徴が存在した。
平時においては極めて効率的であったが、重大な弱点も抱えていた。

第1章 HEMP事象と同期崩壊

■1-1 2027年『皐月事変』

2027年5月、大規模HEMP事象が各地で発生した。この事象について、現在も統一見解は存在していない。

高高度核実験説
衛星事故連鎖説
大規模電磁障害説
複合要因説

しかし重要なのは、原因ではなく結果として人類史上最大規模の『社会同期崩壊』が発生した事実である。

■1-2 同期崩壊

『皐月事変』以後、時刻同期異常、通信順序不一致、経路分岐、認証遅延、在庫情報不一致、決済障害、測位異常が世界規模で発生した。

重要なのは、通信そのものは停止しなかったことである。
通信は存在した。しかし、「一致」が失われた。

第2章 劣化運用社会

■2-1 常時接続の終焉

2030年代初頭、人類は常時接続社会を事実上放棄する。
通信は残った。
しかし以前のような高品質常時接続は維持できなくなった。
その結果、社会は「劣化運用」へ移行する。

■2-2 部分同期社会

高度同期社会期には、世界全体がほぼ同時刻で運用されていた。
しかしGOT社会では、それが不可能となる。
地域ごとの通信品質、電力状態、物流能力が大きく異なるためである。

第3章 GOTの成立/第4章 ノード社会

■3-1 到達性優先

GOT(地上・軌道混成到達性網)は、従来型通信網と異なる思想を持つ。
即時性、完全同期、順序保証、一貫性。
これらの多くが維持不能となったため、別の優先順位が採用された。

■4-1 接続維持思想

2030年代、人類社会では「接続維持思想」が広がる。
これは、完全統一ではなく、既存規格や既存記録を保持したまま接続し続ける思想である。

用語抜粋

劣化運用

社会機能が停止していないにもかかわらず、元の品質を維持できない状態。

局所観測差異

異なる地域が、同一対象に対して異なる状態を保持する現象。

履歴参照対象

消滅後も、履歴接続維持のため保持されるノード。

試読版収録内容

  • 序章 抜粋
  • HEMP事象概要
  • 劣化運用社会概要
  • GOT思想概要
  • ノード識別規格抜粋
  • 用語抜粋

完全版収録予定

  • 詳細年表
  • 地域圏分析
  • ND-ORB-OBS-LEO-03事故記録
  • GOT成立史
  • OBS/LOG思想史
  • 監査資料集
  • 学習課題
  • 地域別通信推移
  • 完全用語集
HG新書編集部
2040年度版
※本ページは『HG新書 近現代史【2040年版】』より一部内容を抜粋した試読版である。